インターン生と共につくる、地方創生の新たなロールモデル
インタビュー
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インターン生と共につくる、地方創生の新たなロールモデル

大阪府四條畷市長 東 修平

2017年1月、28歳で全国最年少の市長になった東修平さん。京都大学大学院で修士号を取得後、外務省職員、野村総研でのコンサルタント職を経て、大阪府の四條畷市長となりました。就任後は先進的な取り組みを次々と実施し、全国から注目を集めています。

 

転職サイトを利用した公募による「民間出身の女性副市長」の選任のほか、「住民票の写しのオンライン申請」「職員採用におけるオンライン面接の導入」など取り組み内容はさまざまですが、その中でも珍しいのが「有給長期インターンの導入」ではないでしょうか。

 

今回は、2021年1月より5年目、2期目の挑戦をスタートした東さんにインタビューを実施。有給長期インターンを導入した理由、インターン生の業務内容や得られている成果、学生のみなさんへのメッセージなどを伺ってきました。
 

<プロフィール>東 修平(あずま しゅうへい)
1988年、大阪府四條畷市生まれ。大阪府立四條畷高校を卒業後、京都大学工学部物理工学科に入学。中学時代に雑誌「Newton」で未来のエネルギーとして原子力に興味をもち、核融合炉を研究したいと原子核工学を専攻する。しかし、東日本大震災による福島第一原発事故を目の当たりにして進路を変更。科学の見識のある人間がもっと政府に必要ではないかと考え、国家公務員を目指す。2014年に外務省へ入省。TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめ貿易協定の交渉に関する業務に従事するが、いくつかの出来事をきっかけに地方から日本の課題を解決したいと市長を志すように。その後、野村総合研究所に転職し、設立されたばかりのインド法人で自動車業界のグローバル事業戦略・経営戦略の策定に携わる。そして2017年1月、現職市長との一騎打ちを制し、28歳で全国最年少市長(当選当時)に当選。2021年1月より5年目、2期目の挑戦をスタートしている。

全住民を対象とする市政運営にこそ、多様性が必要

―――東さんは、四條畷市長に就任した直後から長期インターンを導入されました。今回(2022年4月)で7期生の募集となりますが、行政機関ではかなり珍しい取り組みだと思います。そもそも、なぜ長期インターンを導入しようと考えたのでしょうか。

 

 

一番の理由は、市役所は全ての住民を対象にサービスを提供しているからこそ、サービスを提供する側の私たちも多様であるべきだと考えたからです。

 

市政運営は、0歳児から100歳を超える方まで全ての住民がその対象となります。住民一人ひとりがそれぞれ異なる背景を持っていますし、今置かれている状況もバラバラです。その一方で、当時の四條畷市役所では、似たような経歴や経験を持った職員が多く働いていました。特に年次を重ねるほど、その傾向が強くなっていたんですね。

 

似たような人ばかりが集まっていると、本人たちが決して意図していなくても、意思決定や施策がどうしても偏ってしまう。特定のターゲット層に商品やサービスを提供する民間企業ならまだしも、市役所では全ての住民がサービスの対象。そう考えたとき、サービスを提供する側の私たちも多様であるべきだと考えたんです。

 

経験豊富なベテランだけでなく、若くして幹部になる職員がいたっていい。学生がいるのもいいんじゃないか。そうやって多様性のある組織をつくっていくことが、より良いサービスの提供にもつながる。民間出身の副市長を公募したのも同じ理由からですし、長期インターンを導入したのも組織に多様性を持たせたかったからなんです。

 

 

―――東さん自身が学生時代に長期インターンを経験したのも関係あるのでしょうか。

 

 

もちろん、それもあります。学生時代、私もベンチャー企業で長期インターンをしていたのですが、社員の方から「会社に大きなインパクトを与えてくれた」と非常に喜んでもらえたんですね。学生の立場でも、組織の成長に貢献できる。自分がした体験を、みなさんにもぜひ味わってほしい。そんな期待も込めて導入を決意したんですよ。

 

 

―――「四條畷市役所」を多様性のある組織にするための一環として、長期インターンを導入することにしたのですね。では、四條畷市で長期インターンをすることになった場合、インターン生はどのような業務を担当するのでしょうか。

 

 

基本的には、インターン生本人がやりたいことをやってもらうようにしています。「こんな分野に関心がある」「こんなことができる」といった希望や適性を踏まえ、担当業務を決めていくイメージです。例えばDX事業の推進やシティプロモーションなど、四條畷市にはさまざまな課題に関する業務がありますから。職員と日常的にコミュニケーションを取りながら、市の重要施策に取り組んでいっていただきます。学生ならではの視点やアイデアを、どんどんカタチにしていってほしいですね。

 

 

―――やりたいことができるというのは、かなり魅力的ですね。

 

 

ただ忘れてほしくないのが、「成果を出す」ということ。有給長期インターンである以上、住民のみなさんの税金をいただいて仕事をすることになるんですね。ですから、インターンと聞いて「学びたい」「体験したい」という気持ちだけで応募してくる学生さんは基本的にお断りしています。任された仕事で成果を出すこと、いただいた税金以上の価値を生み出すことに、とにかくこだわってほしいです。

 

 

―――インターン生と言えど、成果にこだわることが重要だと感じました。では、インターン生の活躍によって得られている成果を教えていただけますでしょうか。

 

 

いくつか事例を紹介しましょう。例えば福祉に興味がありインターンに参加した学生は、健康寿命延伸に係る新規事業の事務局員の一員として事業を進めてくれました。彼女が基本的方針につながるような報告書をまとめあげてくれたことで、その報告書をもとに、四條畷市の健康寿命延伸の方針がつくられていったんです。

 

他にもITに詳しかったある学生は、スキルを活かして市の空き家に関する情報のデータベース化を進めてくれました。また、公園活用のワークショップを企画・運営してくれていたのですが、職員からも「インターン生の彼はうまく仕切ってくれる」とお墨付きをもらうほど、信頼を勝ち取っていたんですよ。

 

SNSや動画を活用したシティプロモーションや、住民向けの広報物をより分かりやすいデザインにすることなどは、やはり学生のみなさんが強いと感じます。ですので、みなさんのやりたいこと、強みを活かせることにどんどん挑戦してほしいですね。

 

>>>過去のインターン生の活躍ぶりはこちらをチェック!

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地方創生の新たなロールモデルづくりに参加できる

―――ここまで、四條畷市が長期インターンを導入した目的や実際の業務内容、得られている成果などを伺ってきました。ここからは、地方市政の、さらには四條畷市の長期インターンに携わる魅力について伺っていきたいと思います。

 


四條畷市のインターン生だった学生たちが大学を卒業してから、一緒に食事をしたことがあるんです。そのときに彼ら彼女らが言っていたのが、「公務員がどのように仕事をするのかが分かったのが大きい」ということです。

 

「将来は国連で働きたいから、公的機関の発想の仕方を知りたい」「ゆくゆくは地元に帰り、民間企業側で官民連携、公民連携を仕掛けたい」こうした夢や目標を持って、四條畷市の長期インターンに参加してくれる学生もいるんですね。

 

そんな彼ら彼女らにとって、公的機関と民間企業の発想の仕方、仕事の進め方、意思決定の仕方の違いを肌で知れたことは、その後のキャリア選択にも大いに役立ったようです。実際に働いてみることで、イメージもより具体的になるのでしょう。

 

 

―――一方で、公的機関ならではの厳しさはどんなものがあるでしょうか?

 


同じように卒業したインターン生たちに聞いたところ、口を揃えて言うことがありました。それが、「こんなに公平性を大切にするとは思わなかった」ということ。

 

全ての住民を対象にするからこそ、何を実施するにも公平性が重要になります。それを充分に分かっているつもりでも、職員に相談すると「この観点が漏れていない?」「こういう点にも考慮すべきでは?」「この層を置き去りにしているよね」と指摘をされることがほとんどなんです。そこに苦労したと話すインターン生は多かったですね。

 

とはいえ、職員からのフィードバックを日々もらうことで思考が深まり、次第に自分で考えられるようになる学生も多いんです。自分で考えて進められることが増えていくことで、自身の成長を感じられる機会も多いと思います。

 

 

―――実際に業務経験を積めるのはもちろん、公的機関で働く方たちの考え方や仕事の進め方を肌で感じられるのは貴重な財産となりそうですね。では、東さん自身が考える四條畷市の長期インターンに携わる魅力とは何でしょうか?

 

 

一つ目は、地方創生の新たなロールモデルづくりに参加できること。2021年9月にデジタル庁が発足するなど、行政機関では今、急速にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。四條畷市の場合、それより一足早い2018年くらいから、キャッシュレス決済やオンライン手続きなどの導入を職員が進めてくれましたから、全国でも先駆けてデジタル化を進めてきた実績があるんですね。良いものはどんどん取り入れていこう、という素地ができあがっているんです。

 

世の中が変化していることに加え、新しいことを積極的に進めていける風土もある。こうした環境があるから、日本に1700ある自治体のモデルケースとなるような、地方創生の新たなロールモデルをつくりあげていけると信じています。その一員、さらには中心メンバーになれる可能性があることは大きな魅力ではないでしょうか。

 

二つ目は、成果が見えやすいということ。四條畷市の人口は約5万5000人と、大阪府の中でも規模の小さな市なんですね。だからこそ住民のみなさんとの距離も近いですし、何か政策を実行したときの反応も見えやすいんです。また何か新しいことを始めるときにも、説得しなければいけない関係者がそれほど多くありません。もちろん、大きな組織で働く醍醐味もありますが、「自分の力で動かしていきたい、変えていきたい」という方には大きな組織以上にやりがいを感じられると考えています。

 

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やりたいことが決まれば、今やるべきことも決まる

―――今だからこそ、四條畷市だからこその魅力を感じることができました。ここから、すこし話題を変えたいと思います。学生のみなさんがより良いキャリアを築いていくために、学生時代に何をやっておくのがいいのでしょうか。

 

 

この質問、よく聞かれるんです。私の回答はいつも同じで、「あなたが何をやりたいのか、何を実現したいのかによりますよ」と。例えば、将来は小説家になりたいという人が、いくら走り込みをしてもしょうがないですよね。逆にやりたいこと、将来実現したいことがあれば、何をすべきかは自然と決まってくるはずなんです。

 

やりたいことが見つかっていない場合は、とにかく行動すること。いろんな人に会う、新しいことを始める、新しい環境に飛び込んでみる…。椅子に座って悩んでいても、やりたいことは見つかりません。何かに出会おうと考えるなら、いろいろな経験を積んでみること。実際に経験することで、自分に合うか、向いているかは見えてきます。それを繰り返していくことで、やりたいことが見つかる確率も上がっていくでしょう。

 

いろいろなことに挑戦できるのは、学生ならではの特権です。すこしでも興味があることがあれば、どんどん飛び込んでいってほしいですね。

 

 

―――過去の経験は全て、未来に活きてくるんですね。では最後に、学生のみなさんへのメッセージをお願いいたします。

 

やりたいことを見つけよう。やりたいことが見つかっていないなら、まずは行動してみよう。それに尽きると思います。動いていたらやりたいことも見えてくるはずですし、学生時代は自分の欲求にもっと素直になってもいいと思うんです。

 

2021年度に、四條畷市教育委員会が「教育振興基本計画」をまとめました。驚いたのが、「自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合」が、小中学生ともに7割ほどしかいなかったことです。その結果が良い悪いではないんですが、自分がやりたいこと、自分を向上させていくことへの欲求が弱くなっているのかなと感じたんです。

 

地方創生がしたい、社会貢献がしたい。想いがどれだけ強くても、想いだけでは何もできません。だからこそ自分がやりたいことを見つけて、その分野で成長していくこと。そうすることで、想いの実現にも近づいていくんじゃないでしょうか。

最後に

いかがだったでしょうか。東市長は、大学院生のときに長期インターンを経験しており、当時の経験が今のキャリアに活きていることを実感しています。だからこそ、インターン生の可能性を誰より信じていますし、これまでにも多くのインターン生が実績を残してきたのだと感じました。興味を持った方は、ぜひチャレンジしてくださいね。

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