TimeTreeが考える、スタートアップ企業で働く魅力とは?
インタビュー
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TimeTreeが考える、スタートアップ企業で働く魅力とは?

株式会社TimeTree HR おくむら なつこ

3000万人以上が利用しているカレンダーシェアアプリ『TimeTree(タイムツリー)』。

 

アルバイトのシフトや大学の授業、部活・サークルの予定を管理したり、就活で使っている方も多いのではないでしょうか。パートナーや家族で利用している方もいるかもしれません。

 

このアプリを運営・開発しているのが、2014年に設立された株式会社TimeTreeです。こうした企業は「スタートアップ」と言われ、アメリカ・シリコンバレーではスタートアップから大企業へと成長したケースも多くあります。日本国内でも新しいスタートアップが続々と誕生していることから、就職先の選択肢として興味を持っている方もいることでしょう。

 

では、そんなスタートアップ企業で働く魅力とは何なのでしょうか?

 

今回は、同社で人事を務めるおくむらさんにインタビューを実施。10数名から1万名以上までさまざまな規模の企業で勤務されてきたおくむらさんから、スタートアップ企業で働く魅力をフラットに語っていただきました。

 

<プロフィール>
株式会社TimeTreeに入社したのは2020年。ずっとIT業界で人事を務め、10数名から1万8000名までさまざまな規模の企業で勤務してきた。ゲーセンが好きすぎてゲーセン文化を広めるべくゲーセン関連事業で起業しているが、とあるきっかけからTimeTreeのビジョンや自由度の高い働き方に惹かれ、共に理想を実現したいと入社を決めた。現在は人事業務と自身の会社経営を両立している。

スタートアップ企業でも成長のカタチはさまざま

―――カレンダーシェアアプリ『TimeTree』は2021年5月に3000万ユーザーを超え、9月に創立7周年を迎えました。そんな貴社の成長理由から伺っていきたいと思います。


 

一番の要因は、「世の中の時間をつなげて、世界中の人々がよりよい明日を選択できるようにする。」というミッションを大事にしてきたからです。

 

私たちの会社はカレンダーシェアアプリ『TimeTree』が好調で大きくなってきたイメージもあるかと思います。しかし好調なアプリありきではなく、ミッション実現のためのサービスの開発・運用に取り組んできました。

 

会社の根本であるこの姿勢がズレてしまうと、どれだけ積み木を組み上げても、ちょっとしたきっかけで崩れてしまいます。ですのでメンバー全員の中心にミッション・バリューを置き、サービスも会社も丁寧に成長することを大事にしてきました。

 

 

―――「スタートアップ企業」と聞くと、急拡大、急成長を目指すというイメージがありました。じっくり成長を目指すというのは意外な印象があるのですが、具体的にどんなことにこだわってきたのでしょうか。
 

 

ひとつは、仲間集めです。創業から7年で5~60名規模というところにも現れているかもしれませんが、「とにかくユーザーも人もどんどん増やして、会社規模を大きくしたい!」というような感じで先を急ぐのではなく、ミッションや5つのコアバリューを大切にした仲間集めをしてきました。

 

例えば長く大事にしている入社直後のプログラムに、代表の深川自身が全新入メンバーと、1週間毎日1対1で対話するというものがあります。このように、メンバーとはかなり丁寧なコミュニケーションを取っています。入社前と後のストーリーがつながっているからこそ、入社後の活躍や定着にもつながっているのではないでしょうか。

 

もうひとつが、ユーザーの声一つひとつを大事にし、サービスを作り込んできたこと。例えばホームページに寄せられる問い合わせや要望、アプリストアのユーザーレビュー、 TwitterやInstagramなどのSNS、他にもブログやYouTubeなど、さまざまなユーザーの声を収集し、全体に共有することを続けてきたんです。一つひとつの声から改善のヒントをもらい、サービスを真摯に作り込んできた。こうした積み重ねが多くのユーザーから支持された理由だと思っています。

 

ちなみに当社の場合、『TimeTree』のユーザーだった方がサービスを使う中で会社に興味を持ち、選考を受けてくださるケースもあるんですね。書類選考から人事、現場メンバー、代表との面接と進んでいくのですが、「ミッションからサービス、それを作るメンバーの姿勢までがひとつの線になっている」と感じてくださることも多いようです。こうした点も会社の特徴としてあげられるかもしれません。

 

 

―――なるほど。「スタートアップ企業」といっても、その成長にいろいろなカタチがあることが分かりました。今後はどういった点に注力していくのでしょう。

 

 

『TimeTree』は、グローバルで3000万ユーザーを超えるまでになりました。最近ではユーザーの方々がクチコミで広めてくださっていることもありますが、こうした状況に満足せず、今後もユーザーに寄り添い続けていきたいですね。

 

そのためにもビジネス視点での成長についても必要と考えており、2021年7月にはtoB向けの日程調整サービス『Tocaly』をリリースしました。『TimeTree』に関しても、今後は企業とのコラボレーションを増やしていくなど、対企業向けのサービスやサポートを展開し、より知名度を高めていくつもりです。じっくりコツコツという方針はブラさず、新しい仲間と一緒に今後も成長を目指していきたいと考えています。

 

TimeTree様_01

スタートアップ企業で働く魅力、きびしさ

―――おくむらさんはこれまで、従業員1万名以上の大手企業から10名程度のスタートアップ企業までさまざまな規模の組織で働いてきたそうですね。いろいろな組織を経験したからこそ分かる、「スタートアップ企業で働く魅力」とは何でしょうか。
 

 

大前提として、それぞれに得意なところ、苦手なところがあると思います。ですのでどちらが良い悪いというのではなく、フラットに情報を見て、自分に合うと感じたほうを選んでほしいですね。その上で魅力をお伝えするなら、「最初から最後まで、ビジネスの流れすべてが見えること」が面白いのではないでしょうか。

 

例えば大手企業の場合、自分が知らないところで、知らない人が仕事を獲得してきて、誰かが契約書や納品書を作成してくれて、知らないうちに売上ができて、見えないところで次の売上目標が決まって、というように、流れの中の一部だけを自分が担当している感覚にもなります。一人ひとりのそうした積み重ねが会社の売上になり、社員の給与になり、その仕組みゆえに大きな成果があげられるのですが、どうしても「自分の仕事の価値」を感じにくいんです。

 

スタートアップ企業の場合、すべての流れを見て、把握できます。それはスキルアップにもつながりますし、周囲への感謝にもつながるでしょう。仕事を受け渡す次の人に、うまく渡してあげよう、うまくつなげたいという気持ち。そんな風に一緒に働く人の顔が見え、その人のためにも良い仕事をしようと思えるのは良い経験になると思います。人数もさほど多くないので、自社のミッションに共感している、感覚の近い人と一緒に働く心地良さも感じられるでしょう。相手の顔が見え、価値観の近い人と心地良さを共有できることはスタートアップ企業ならではの特徴です。
 

他にも経営者との距離が近い、大きな裁量を持って働けるなど、スタートアップ企業で働く魅力はいろいろあります。とはいえ大手企業にも、その規模だからこそできる仕事、会社の名刺があるからこそできる仕事もあるわけです。このようにいろいろな見方ができるからこそ、フラットに判断することを大事にしてほしいですね。
 

 

―――どちらが良い悪いではなく、フラットに情報を判断し、自分に合うほうを見つけることが大切だと感じました。ところで学生の中には、スタートアップ企業=ブラック、大変そう…といったイメージを抱いている人も少なくないようです。

 

 

この点について理解できる部分もあります。SNSなどで発信されている会社員の方のクチコミなどでも、「この仕事をすると聞いていたのに配属が違い、希望していない職種からと言われた」「聞いていた残業と違った」などの内容も見かけます。

 

こうした情報から「スタートアップ企業は…」と語るのは主語が大きすぎますが、一方で若い方々が不本意な経験をしているのは事実ですので、スタートアップで働く大人の一人として申し訳ない気持ちです。人の一日はかえってこないと考えると、若い人を裏切るような大人がいることは悲しく思います。


TimeTreeで働く仲間に目を向けると、就労条件での企業探しや、大手だからスタートアップだからといった基準で企業を選んだりしていないなと感じるんです。私自身もそうですが、「世の中のどんな課題を解決したいのか」「それに対して自分は何ができて、何はできないのか」「どんな環境で、どんな人たちと働きたいのか」そういったことを大事にした就職をしているように思うんです。

 

もちろん、人それぞれに向き不向きや事情があると思います。また企業としても、大手企業が優れていることもあれば、そうじゃないこともあるでしょう。だから条件だけでは選べないこともあるはずです。自分のいろんな理想があって、優先順位があって、譲りたくないことや譲れることがあって、そんな自分が企業を選べる方法を見つけることが重要だと思います。働くうちに知らないことを知ることもあります。自分の企業を選ぶ基準が変わってきて、会社との考えが合わなくなったら、別の会社に移ってもいいし、起業したっていいんですから。

 

 

―――イメージや条件だけで選んでいくのではなく、自分のやりたいことを突き詰めたうえで企業探しをすることが重要なんですね。一方で、スタートアップ企業で働くリアルな厳しさはどんなものがあげられるでしょうか。

 

 

一般的にスタートアップ企業の場合、未経験者をイチから育てる余裕がないため、「つきっきりで育ててもらいたい」「入社後にスキルを身につけたい」という方には厳しいと思います。大手企業のように一括採用で受け入れ、しっかり研修を行い、現場で活躍する人材にじっくり育てていく、ということが大企業ほどにはできないんです。これまでの知識や経験、スキルをどう活かすか、自分の武器でどう戦っていくのか、を自分で考えて実行するという意識がスタートアップ企業では強く求められます。

 

さらにTimeTreeならではの厳しさをあげるなら、「一人ひとりがプロであることを求められる」ことかな、と思います。そのために、冒頭の質問で仲間集めについてお伝えしましたが、面接の時から「どんな専門性を、どんな人たちと、どのように活かして、どんなチームになるのか?」というように、応募者と当社メンバーがお互いフラットに話し、すり合わせるんです。同じように入社後も、専門性をどう発揮し、自社の成長にどう貢献していくのかを考え、行動し続けることが求められます。

 

目標管理面でも、会社の目標が決められてそれをもとに個人の目標を決め、そこから1年後、3ヶ月後、1ヶ月後の行動目標を上司と一緒に決めていく会社が多いかもしれません。しかし、当社は違います。目標も自分で決めますし、それを達成できたかを判断できるのも自分だけ。ですので、「誰かに決めてほしい」「指示してほしい」というタイプの方は当社に向いていませんし、成長しにくいのではないかと思います。
 

TimeTree様_02

未来のために、今できることから始めよう

―――ここまでのお話から、「TimeTreeで働きたい」と感じた学生もいると思います。長期インターンシップや新卒採用について、現在の実施状況を教えてください。
 

 

未経験の学生をイチから受け入れることについては、現在は長期インターンも新卒採用も実施していません。採用時にスキルのない学生をきちんと育ててあげられる、会社が責任を負ってあげられる、というフェーズにまだないと考えているからです。しかし自律的に取り組んでいる方には常にチャンスがあることを知っておいてほしいです。
 

 

―――ありがとうございます。この点については、自分がやりたいことを突き詰め、そのために必要なスキルや知識が何なのかを考えることが重要だと感じました。では、学生のうちはどんなことを意識して行動するのが良いのでしょうか。
 

 

これまでの話と逆行するかもしれませんが、若いみなさんは、自分の弱みとじっくり向き合うのもいいんじゃないかなと思ったりしています。というのも年齢を重ねてから弱みと向き合い、弱みを克服したり、弱みを減らしたりするのは大変だから。今の段階で自分の苦手なことを自覚し、少しでも変えようとするのは大事なことだと思います。

 

「自分の強みで勝負しよう」「好きなことを仕事にしよう」という話もありますが、若いうちの今はまだ逆でよくない?と私は考えたりします。強みを出すにも、弱みを知っておかないと出せませんし。また、自分の「苦手のレベル」を引き下げておけると、将来的に自分の幅は広がっていくはずですから。

 

やがて結婚や子育てに代表されるような各家庭の事情によって優先順位が変わったり、使える時間や体力が減ってきたりすると、自然と自分の強みや得意なことで仕事をするようになってきたりします。だから学生のうちは、自分の弱みにもしっかり向き合ってほしいと思っています。

 

 

―――最後に、学生へのメッセージをお願いします。

 

 

世の中を見ていると、成功した人や失敗した人にばかり目がいってしまうかもしれません。しかし、普通に、地道に、毎日8時間コツコツ働き、経験を積み上げていけば、気づけばスキルがつき、知識がつき、視野が広がり、人脈ができたりします。私のように経験はないけれど大好きな業界で起業することや、新たなやりがいに出会ったりするかもしれません。実際、私自身はずっとIT業界で人事として働いてきたものの、ゲーセン好きが高じてアーケードゲーム事業で起業したくらいですから。

 

学生のみなさんも、就職したら同じ社会人の仲間として一緒に頑張りましょう。

 

いろいろな会社で働いてきて思うのは、年々職種の垣根がなくなってきているということ。例えば人事でも、採用面で会社のことを知ってもらうには広報の知識やスキルが必要ですし、TwitterなどSNSを運用するならライティング力も求められます。自社採用をより良くするには、企画力に加え、それを実行する調整力も欠かせません。このようにひとつの職種でも幅広い経験を積めますし、この流れはさらに加速するでしょう。

 

だからこそ、業界や職種の固有イメージ、誰かに聞いた情報だけで判断せず、知識をつけてきちんと調べた上で、自分自身で仕事や環境を見つけてほしいです。そのほうが、同じ時間働くのでもより実りある時間になるはずですから。

最後に

いかがだったでしょうか。TimeTreeをはじめ、スタートアップ企業で働く魅力を感じていただけたなら嬉しいです。なお取材を通じて感じたのは、自分からどんどん行動することの大切さ。社員の方々も、次のように仰っていました。

 

「大学生活は4年間ありますから、失敗してもリカバリーできるだけの時間がありますし、若さと体力もあります。ですので、例えば興味がある会社があるなら、自分から連絡してみるなど行動することが重要です」

 

「やったことに対して誰も文句は言いませんし、自分で責任を負っていれば邪魔する人もいません。失敗したって次の行動への学びが得られますからね。学生のうちはアクションを起こさないのが損くらいの気持ちで取り組んでほしいです。行動しないという選択肢はもったいないので、まずは第一歩を踏み出してみてください」

 

社会に出た経験がないと、最初は得られる情報も少ないでしょう。でも、周りの社会人に教えてください、助けてくださいと言えば、快くサポートしてもらえるはずです。優しい人はたくさんいますから、積極的に助けを求めてほしいと感じました。

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