創業の原点は、代表・土屋の米国インターンでの体験だった
インタビュー
  • hatebu
  • line

創業の原点は、代表・土屋の米国インターンでの体験だった

株式会社グッドパッチ Design Ops HRBP 小山 清和

2020年6月に東証マザーズ上場を果たした株式会社グッドパッチ。日本で唯一、デザイン会社で上場しています。その原点は、代表・土屋さんの米国でのインターン経験にありました。

単身、シリコンバレーに飛び込み、衝撃を受けたという土屋さん。一体、そこで何を見て、感じたのか。そして創業から10年、数あるデザイン会社のなかでも異彩を放つグッドパッチはどこへ進んでいくのか。

同社でHRBPを務める小山さんにインタビューを行い、そのルーツと掲げるビジョンについて伺ってきました。

 

※前編・後編の2回に分けてお送りします。
 

<プロフィール>
大学卒業後、大手外食チェーンに入社。店舗勤務からスタートして3年目に店長へと昇格した後、大手人材サービス会社の営業へと転職。3社目より人事にキャリアチェンジし、ソーシャルゲーム制作会社をはじめさまざまな企業で10年以上にわたり人事経験を積む。株式会社グッドパッチに入社したのは2016年10月。代表・土屋の人材や採用に対する考え方に共感し、入社を決めた。転職回数6回という自称・破天荒人材。趣味はランニングや筋トレなど身体を鍛えること。
 

日本は、デザイン後進国だ

―――まずは、会社のルーツからお伺いしていきます。代表の土屋さんは、最初からグッドパッチのような会社をつくりたいと考えていたのでしょうか。

 

 

実は違うんです。代表の土屋はもともとWebディレクターをしており、30歳までには起業しようと考えていたものの、どんな事業をやるかは決まっていませんでした。しかし、27歳のときにあるきっかけから起業を決意することになり、事業のネタを求めてさまざまな起業家の講演に参加するようになりました。

 

運命が大きく変わったのが、たまたま参加した学生向けのイベントでDeNAの南場智子社長の講演を聞いたことです。南場さんは当時、日本とシリコンバレーを行き来する生活を送っていたのですが、参加者に向けて次のように話したそうなんです。

 

「日本のベンチャーとシリコンバレーのスタートアップはまるで違う。いろいろな国の人が集まり、グローバルな視点でひとつのサービスをつくっている。だからこれから起業する君たちも、多国籍軍をつくりなさい」

 

この言葉を聞いた土屋は、翌日にはシリコンバレー行きを決意しました。2011年3月にサンフランシスコへと渡り、btraxというデザイン会社でインターンとして働き始めます。そこでいろいろなスタートアップと出会い、さまざまなプロダクトに触れる中で、彼はあることに衝撃を受けたそうなんです。

 

 

―――衝撃を受けた…具体的にはどのようなことなのでしょうか?

 

 

それは、どのスタートアップのプロダクトを見ても、非常にシンプルで美しく、使いやすいということです。当時の日本ではプロダクトに多くの機能を実装するのが良しとされ、デザインは二の次となっていたのに対し、アメリカではその逆。開発途中のベータ版の段階からデザイナーが参加し、最適なユーザー体験を考え抜いたデザインを追求することが当たり前になっていたんです。

 

日本では、デザインと聞くと表層的なきれいさやかっこよさをイメージする人が多かった時代です。しかしグローバルでは、新商品や新サービスなどのプロダクト開発のみならず、新規事業立ち上げ、ブランド構築、組織コンサルティングなどさまざまなビジネス課題を「デザイン」で解決するという動きが加速している。日本はデザイン後進国であり、このままではダメだと考えるようになっていったそうです。

 

「事業を創る段階からデザイナーが参加し、最適なユーザー体験をデザインするという考え方は、これから日本でも必ず主流になっていくはず」土屋が思いきって飛び込んだアメリカでのインターン経験を通じて、デザインの最前線に触れたことが、グッドパッチの創業へとつながっていったんですよ。

 

 

―――そんな経緯からスタートし、2021年9月に創業10周年を迎えたわけですね。

 

 

これまでの10年間で紆余曲折はありました。しかし、日本においても「ビジネス課題をデザインで解決する」という考え方が徐々に浸透し、私たちのもとに相談が寄せられるケースも増えてきています。このようにマーケットの変化が追い風になったことあり、デザイン会社として初めての上場を果たすこともできたんですよ。

 

goodpatch01

「Stay blue, go forward」

―――東証マザーズ上場、創業10周年…と順調に成長しているように感じます。ここからは、今後のビジョンについてお伺いしていきたいと思います。
 

 

上場日に公開した代表 土屋からの手紙に記載されグッドパッチのメンバーが大切にしている言葉の一つが、「Stay blue, go forward」。これはうぬぼれることなく青くさく挑戦を続け、前進し続けようという想いが込められています。

 

おかげさまで多くの依頼をいただけていますが、これまでの成果はこの分野で他社よりもいち早くスタートしたからこそ挙げられたもの。今後は、誰もが知る大手企業や有名企業、官公庁など大規模なプロジェクトを積極的に手掛けていくことで、限られた領域だけでなくより多くの人に認知される存在になっていきたいと考えています。

 

例えば最近では、サントリー食品インターナショナルがリリースした『SUNTORY+(サントリープラス)』のサービス開発に参加しました。こうした事例を増やしていくことで、グッドパッチという会社をより多くの人に知ってほしいですね。

 

※代表の手紙はこちら

※『SUNTORY+(サントリープラス)』の詳細はこちら

 

 

―――なるほど…。そのように考える背景には、どのような想いがあるのでしょうか?

 

 

グッドパッチでは、「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、日本におけるデザインの価値、デザイナーの地位を向上させようと取り組んでいます。

 

「デザイン」と聞くと、まだまだ多くの人はきれい、かっこいいなどの装飾的、表層的なものをイメージしますよね。しかしデザインの役割とは、そのものの本質的な価値を見出し、価値を最大化させること。具象と抽象を行き来しながら、戦略や要件、構造、骨格、表層すべての設計をすることを意味します。

 

だから私たちは、例えば「かっこいい商品パッケージをデザインしてほしい」といった依頼は受けません。クライアント企業のパートナーとなり、プロジェクトの上流から参加できる仕事だけを引き受けています。なぜそのプロダクトが存在するのかというところから一緒に議論し、そのプロダクトを手にしたユーザーの体験までをデザインし、クライアント企業のビジネスに貢献する。このように本質的な価値を追求する仕事を通じて、デザインそのものの価値も向上させていきたいと考えているんです。

 

 

―――そういった仕事を増やすことが、デザインの価値を世に広めていくと…。

 

 

はい、その通りです。多くの人にデザインの価値が知られるようになれば、「自社のビジネスにも取り入れよう」「自社でもデザイナーを採用しよう」など、デザインに対してより多くの投資がされるようになりますよね。私たちが目指すのはそんな世界です。そのためにも、より多くの方々が注目するような大規模なプロジェクトを手がけ、グッドパッチ、ひいてはデザインの価値を広めていきたいんですよ。
 

goodpatch02

専攻に関わらず、デザイナーを目指してほしい

―――表層的なきれいさ、かっこよさを整えるだけでなく、本質的な価値を見出し、その価値を最大化させる。こうした「デザインの仕事」には魅力を感じますが、一方でデザイナーはデザインの専門スキルや知識を学んだ人しかなれないイメージがあります。
 

 

グッドパッチのデザイナーは、デザイン系の学部・学科を専攻していた人しか採用しないかというと、そうではありません。なぜなら、私たちのデザインの本質はクライアント企業のビジネス課題を解決するところにあるため、入社時点で必ずしもデザインの専門スキルや知識が必要ではないからです。

 

もちろん、最終的なアウトプットのためには専門スキルも求められますし、常にスキルを向上させていく必要もありますが、それは入社後に学べばいいこと。それよりも、グッドパッチの掲げるミッションやビジョンに興味を持ち、やってみたい、面白そうだと感じてくれる仲間を増やしていきたいですね。

 

現時点では、デザイナーと聞くと「自分には関係ない」と選択肢から外してしまう人も少なくありません。私たちは、そんな状況を変えていきたいんですよ。

 


―――「デザイナー」という職種名のイメージだけで判断せず、その仕事が提供する本質的な価値について理解してほしいということですね?

 

 

はい。正しい情報をインプットしたうえで判断してほしいんです。そうすれば、もっと多くの人に興味を持ってもらえるのではと思っています。まだまだ正しく認知されていないし、誤解されている。デザイナーと聞いただけでブラックなイメージを持ち、敬遠してしまう人もいるわけです。でも、グッドパッチのデザイナーは、働き方を含めてイメージしているものとはきっと違うはず。だからまずは、私たちの仕事を詳しく知るところから始めてほしいと思いますね。

 

 

―――イメージで判断するのではなく、正しく理解したうえで判断してほしい、その仕事を通じてどんな価値を提供できるかを知ってほしいということですね。

 

 

その通りです。このインタビューを読んでいる「あなた」にも可能性があることを信じてほしい。きっかけは、デザインという入り口じゃなくても構いません。自分が仕事を通じて実現したいことが、グッドパッチの考え方と合っていればいいわけです。

 

どんな経緯であれグッドパッチのデザイナーという仕事に興味を持ってもらい、この仕事に就いた人がイキイキと働けるようになることで、周囲から「良い仕事を選んだね」と言ってもらえるようにしていきたい。そんな未来を実現することも、「デザインの力を証明する」ことにつながっていると思うんですよ。

 

※<後編>はこちら

最後に

いかがだったでしょうか。インタビュー前編では、グッドパッチの創業の経緯や同社が大事にしていること、デザインに対する考え方などについて語っていただきました。なかでも「デザインの専門スキルを持っていなくてもデザイナーになれる可能性がある」という点は取材者にとっても新しい発見でした。

 

実際、学生からも「デザイン系の学部・学科じゃないとデザイナーになれないのか」という質問は多いそうですが、その点は関係なく多くの人に門戸が開かれているそうです。同社の仕事の進め方や世の中に提供できる価値について共感した方は、ぜひ選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

 

※後編では、同社で働く魅力、インターンについて、学生へのメッセージなどを語っていただいています。ぜひチェックしてくださいね。

Copyright © en Japan Inc. All Rights Reserved.